郷土の生い立ちと災害リスクを知る

郷土の生い立ちと災害リスクを知る

災害が起きるたびに、「ここでこんな地震が起きるとは思わなかった」「ここまで津波が来るとは思わなかった」「長年住んでいたが、このような洪水が起きるとは思わなかった」等などの声が聞かれます。

郷土の土地や山々がどうしてあるのか。なぜそこに川が流れているのかを知らず、災害が起きたときにそのパワーに打ちのめされるのことが繰り返されるのは、地学教育、防災教育の課題です。

地震や火山噴火、土砂災害、洪水も、私達が住む土地を創造してきた自然の営みとの側面があります。人の一生の単位を超えて繰り返される自然の働きを知り、その作用を想定して住居や都市計画、避難行動などを備えをしていくことが「自然との共生」であり、防災の基本です。

横浜市小学校資料「わたしたちの横浜」「横浜の大地」(鷲山執筆 蟹江康光博士監修)

この風景の意味を解説します。

PDF「横浜の大地」

繰り返される関東地方(南部フォッサマグナ)の地震

関東地方は「フォッサマグナ」(大きな裂け目)であり、そこに丹沢、伊豆島弧が衝突していることをナウマンが発見して名付けたものです。この美しい風景には、プレートがせめぎ合って山地を作り、火山を噴火させている巨大なエネルギーが働いています。

丹沢山地で発見された「アオサンゴ化石」が物語る日本列島誕生の物語

1970年代に、一人の高校教師(当時東海大学相模高校理科担当教諭)、門田真人先生は、登山家でありダイバーでもあり、丹沢山地を歩くうちに、巨大な石灰岩の岩塊をみつけた。その表面に現れた波型の模様は不可思議で、どうやらサンゴらしい。そのサンゴがどの種類なのかを突き止めるために沖縄の海に潜ってその形状が一致するサンゴを探した。すると、それが「アオサンゴ」の断面に一致することがわかった。しかも、アオサンゴは沖縄南部以南にしか生息しない。その化石を東京大学の濱田隆士博士(後の生命の星地球博物館初代館長)に見せたところ、目を丸くして驚かれた。それは、丹沢山地がはるか南の海からフィリピン海プレートに乗って日本列島に衝突した証拠として認められることになる。

門田先生論文

丹沢オウムガイ探検隊

東京からもよく見える「丹沢山地」その標高1300m地点から「オウムガイ」の化石が産出するという。オウムガイはマレーシアなどの温かい海に生息する生き物で、5億年前から変わらない生きた化石である。それが、なぜ丹沢山地にあるのか?探検隊は1500万年前のサンゴ礁であった白い岩石の階段を登り、オウムガイの化石に出会う。それは、丹沢山地が遠い南の海の火山島であったことを示す証拠だった。

丹沢枕状溶岩探検隊

丹沢山地で最も古い岩石は、「玄武岩」という火山岩であるが、それは断面が枕のような楕円形である。これを枕状溶岩いうが、これは海底で吹き出した溶岩が海水で急に冷やされて固まっていったものであることが、ハワイの海底での観察によってわかった。深海底で吹き出した溶岩の地層がが丹沢の最高峰である蛭ヶ岳に見られる。探検隊1700万年前のはるか南でおきた海底噴火の現場を発見する。

丹沢の地学資産保全活動

アオサンゴ化石も、枕状溶岩も、台風などでは土石流にさらされる谷底にあり、埋もれたり、流されたりする。門田先生とその仲間たちは毎年1月4日「石の日」にその保全活動を行ってきた。日本のプレートテクトニクスの証拠となり、「動く大地」の証人を保全する仲間たちの活動を記録した。

箱根!首都圏の巨大火山

箱根は観光地として親しまれており、正月の箱根駅伝では、東京を出発したランナーが昼過ぎには到着する近距離にある。しかし、箱根は紛れもない「カルデラ火山」であり、過去には神奈川県から東京地方にかけて巨大な火砕流と火山灰で埋没させた地層が残っている。箱根火山までは地質的に「伊豆半島」であり、フィリピン海プレート上にある。この自然との共生は防災上も課題である。

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門田真人先生の功績

郷土の地学の優れた探求者であり、情熱あふれる教育者