学校防災教育のカリキュラム・マネジメント

 公立の小学校や中学校は、その児童生徒は基本的に地域の保護者(児童生徒がいる現役世代の地域住民)を対象に教育活動を実施しています。

 防災教育を行う上で、発達段階と、教科領域に対応した防災教育を実施することができるし、また、しなければならない位置にあります。子ども達は、そこで学んだことをもとに、地域人として成長していくのです。

 また、多くの公立学校は、災害対策基本法の定める「指定避難場所」であることも多く、地域の防災の拠点なのです。

文部科学省「学校における防災教育・安全指針」(本文リンク)
〜-防災教育の充実と児童生徒等の安全確保のために〜

1 防災教育の意義

学校における安全教育は、自他の生命尊重を基本理念に、幼児、児童及び生徒 (以下 「児童等」 という。) が生涯にわたって安全な生活を営むことができるよう、 自律的に安全な行動ができる態度や 能力を身に付けることをねらいとしている。

防災教育は安全教育の一環として行われるものであり、 児童等に実践的な防災対応能力を培うこ とを目的とし、 「生き抜く力」 をはぐくむことと密接に関連していることから、 各学校においては、 教育活動全体を通じて、 体系的、 計画的に防災教育を展開する必要がある。

2 学校防災に関する基本的な考え方

学校における防災 (以下 「学校防災」 という。) は、 「防災教育」、 「防災管理」、 「防災に関する 組織活動」 の各分野に整理することができる。 これらを適切に推進することにより、 児童等の安全確 保と防災対応能力の向上を目指す。

(1) 防災教育

生涯にわたる防災対応能力の基礎を育成するため、 各教科、 道徳、 総合的な学習の時間、 特別活動等の教育活動全体を通して防災教育を実施する。
ア 自らの安全を確保するための判断力や行動力の育成
イ 生命の尊重や地域の安全のために貢献する心の育成
 ウ 自然災害の発生メカニズムをはじめとして、地域の自然環境、災害や防災についての基礎的・基本的事項

上の赤字の部分を文部科学省の防災教育の指針と理解することができる。

つまり、「各教科、 道徳、 総合的な学習の時間、 特別活動等の教育活動全体を通して防災教育を実施する。 」
 ということは、「防災科」を作るということでななく、各教科領域に横断的に位置付けてカリキュラムを編纂すべし、ということである。

 「横断的」という言葉は、現場の先生達に意外と理解されていない。
 「社会科見学の体験を国語で作文にしたら、横断的でしょうか?」という先生がいる。

  よく理解しているのは養護教諭と栄養教諭・栄養職員である。
  養護教諭は、「健康教育」「生命尊重教育」「性教育」「応急手当て」の教育をやろうとしたら、保健体育や理科、などの教科にクロスして行わなければならない。

 栄養教諭は、食育をやろうとしたら、家庭科だけでなく、理科、社会、算数、国語、などにクロス(横断)して行うカリキュラムを考えることができる。

要点 横断的扱いとは、教科を行いながら、「環境教育」「防災教育」などの教育カリキュラムの実現をめざすもの

国定国語教科書「稲むらの火」に見られる防災教育の「横断的扱い」

 防災教育でいうと、安政東南海地震の実話を基にした、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「生ける神」をもとに小学校教諭 中井常蔵が翻訳して書いた「稲むらの火」が1937~1947の国語国定教科書にあった。
 関東大震災を予測していた今村明恒が、防災教育として後押しをしている。

 奇しくも、東日本大震災が3月にあった、2011年四月から使われるようになった、光村図書の5年生国語の教科書に防災学者の河田恵昭先生が書いた「百年後のふるさとを守る」という長文の教材がある。
 河田先生は、東日本大震災のような災害が起きることをその著書で警告していた。

 この教材を国語として学ぶとともに、同時に二つのことをやってのけるように、文部科学省の新学習指導要領は求めている。

 1 物語文から、津波の実態、あらすじや登場人物の気持ちや生き方を読み取る。

 2 「道徳」として、主人公の自然に対する畏怖畏敬、信念を持った生き方、思いやり、社会貢献の精神を学ぶ

 3 「持続可能な社会のための教育」の一つ「防災教育」として、災害に対する自然理解、初期対応、事後対応、未来の災害への予防

 実は一石三鳥の考え方は日本の教育行政のお家芸で、国語の教科書で繰り返し深く読み込ませることにより、道徳と防災教育をやろうとする明確な目的意識があった。

 その考え方の最たるものが「軍国教育」であり、すべての教科領域をとおして、軍国教育を推進していた「横断的扱い」の暗い実績もある。
 「墨塗り教科書」は、GHQが日本の教育の軍国教育クロスカリキュラムを排除しようとしたものだったかもしれない。

別紙1 学習指導要領における防災に関する記述(小中学校)

小学校の防災教育カリキュラム試案(鷲山)PDF

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