四つの避難場所を学校・地域・保護者・子どもたちが共有

 大川小学校の事故調査報告書でも、「避難場所」についての混同があったのではないかと指摘されている。

 実は、避難場所には何種類もある。
  災害の種類によっても避難場所は異なることがある。
 災害対策基本法等でも示されているが、名称は自治体ごとに違っている場合もある。
 自治体の「地域防災計画」に示されているので、学校は、地域の避難場所を明確にして、職員、児童、保護者に教育する必要がある

 また、2018年西日本豪雨災害でも課題が明確化してきたように、自治会等で避難場所を考え、決めておくこと。避難経路もそれぞれ住民に考えさせておくこと。避難に支援が必要な人への支援体制を決めておくことなとが、防災対策としてまずはやるべきことだ。

 そして、学区、および各地区(自治会等)の避難体制を明確にして、学校からの避難場所は明確にしておかなければならない。

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避難場所は「現実的」か?

「釜石の奇跡」と「釜石の悲劇」

 釜石の鵜住地区では、「釜石の奇跡」が防災教育上の大きな成果として有名だが、「釜石の悲劇」が同じ地域で起きている。

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児童全員と地域住民の多くが助かった
      仙台市立荒浜小学校の避難場所決定

 成功例として伝えられているのが、仙台市立荒浜小学校の事例だ。

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東北大学教授 佐藤 健先生のご案内で視察
2階まで津波が浸水した。

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荒浜小学校二階 津波が2階に突入したことがわかる


 同小学校は現地に行ってみるとわかるが仙台平野の海沿い500mにあり、高台の避難場所への避難は難しい。特に高齢者などが遠い避難場所へ避難行動をとるのは非現実的と考え、荒浜小学校を津波時の避難場所と決めた。

 2010年2月のチリ地震の際の避難行動をとって、住民は考え、要望を出した。

1 高齢者は言っとい避難場所である荒浜小学校に避難するのがやっとである。

2 正式な避難場所である七郷小学校は4キロの地点にあり、移動は困難である。

3 高齢者、特に足の悪い者にとって、3、4階に上がるのは大変である。

4 学校前の市道は、渋滞を起こし、スムーズに通行できない状態であった。

特筆すべきは、住民の要望を小学校と行政が受け止め次の対策を実行した。

○荒浜小学校を正式な避難場所に引き上げ、津波の際は「籠城作戦」を確定。

○災害備蓄を1.5倍に増やし、800人の住民が最低三日間生活できる量を確保。

○体育館は津波による水没が予測されるため、毛布、扇風機など備蓄を三階に移動。


 その結果として、在校中の全児童と避難してきた住民が助かっている。
 用務員に相当する学校職員に、防災拠点支援技能なども身につけさせていたことも円滑な避避難所運営に貢献できたという。

 災害に対する避難場所について、学校と地域が共通理解を確立していたから人命がかなり救われた例である。
 荒浜小学校は震災遺構として保存され、公開されている。

参考文献 田端健人著 「学校を災害が襲うとき〜教師たちの3.11~」春秋社

教訓

1 津波や大火災から身を守る避難場所と家に住めなくなった場合に生活する避難場所を地域と学校とで共通理解し、住民、児童、保護者層、学校職員とで共通理解化する。

2 津波・火災から身を守る避難場所は、現実的に避難できる場所を各地区、各家庭、各個人で決めておく。

参考 3がつ11にちをわすれないためにセンター

謝辞 東北大学教授 佐藤健先生には、被災地の視察をご案内いただき、貴重なご示唆をいただきました。心より感謝申し上げます。



 



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